今日はバラナシで出会った超貧乏インド人のタカシについて書こうと思います。タカシは日本語ぺらぺらです。最初は警戒しましたが金玉丸見えの奴に警戒してもしょうがない気もしてつるむことにしました。
逆光で上手い感じに認識し辛いのですがご覧の通り貧乏すぎてジーパンから金玉がオーバーフローしています。
タカシがあまりに貧乏なので、日本に送る荷物に含めようと思っていたステテコを彼の売り物である首飾りと交換することになりました。一旦宿に戻ってステテコを持って来たのですがタカシ曰く
「うーんちょっとおっきい」
との事で側に居た麻薬ディーラーの彼がステテコを持って行ってしまいました。金玉丸見えのやつが少々サイズ大きい小さいでゴタゴタ言うのは的外れな気がするけど、金玉丸見えのやつがその程度の思考を巡らせれるかどうかも怪しいしやっぱ見えるべくして金玉丸見えなんかなぁとか思ったりしました。
それを見越した訳ではないんだけど、アンダーウェアのパンツも持ってきていたのでした。パンツの枚数が無駄に1枚多くて特に必要なかったので持ってきたのですがタカシ曰く
「インドでは他人にアンダーウェアを上げることは良くないことなんだよ。」
と言われだからお前は金玉丸見えなんだろアホかとか思いましたけどそもそも金玉が丸見えの時点でアホだということは悟らなければならないのでそこはぼくのミスだとか思いました。が、しかし
「じゃあおれにくれ」
と、他のインド人がぼくのパンツを持って行きました。
「え、タカシ、さっきインドではアンダーウェアを人に上げるのは良くないことだって言ってたよね?」
するとディーラーが
「彼は貧乏なんだ。」
とか言ってたけどこいつタカシより良い物着てるように見えるし少なくとも大差ないし
「洗って使うから大丈夫なんだ。」
とかそもそもさっき言ってたことと辻褄が合わないというかまぁそういうのも含めインドなんだなぁとかぼくは思う以外にないわけですね。
そのままタカシにプージャに連れてきてもらいました。プージャとは毎晩ガート(お祈り広場)でやる大きめのお祈りです。毎日お祭りみたいな感じ。
彼の超貧乏具合を最も痛感した瞬間です。側に落ちてた鳥の羽を拾って手でいい具合にほぐしそのまま耳掃除を始めました。彼の持ち物はポケットにある40ルピーとさっき買った噛み煙草と商売道具であるアクセサリー、股の部分がやぶけたジーパンとアディダスのパクりポロシャツのみです。
ほんっとにそれだけです。
タカシに安い飯屋を紹介してもらいました。チャパティ(薄いナンみたいなやつ)とカレーに申し訳なさ程度にキュウリが付いてる定食のようなもの。これが1つ40ルピーです。この時頼んだボトルの水10ルピー程度、タカシがいつの間にか払ってくれてたらしい。ありがとう。でも食事代二人前は当然の用におれが出したしあいつは一言もありがとうって言ってくれなかったので、根に持ってるわけではないけど平均的な日本人の感覚としては少しぐらいありがとうって言ってくれればよかったなぁとか水の一件でありがとうと言ったぼくには思えてしまったワケです。お金の話ではないです。
文明の力を利用しR.E.M.のMan On The MoonとMO’SOME TONEBENDERのペチカを聴くタカシ。彼にはいったいどのように聴こえるのだろうか。
あとほとんどはタカシとカルマについて話してた。カルマはお金より大事で、いいカルマをたくさん溜めると死後いいことが起こるそう。例えば上等生物に輪廻転生できたりとか。おれが彼と話して解釈したカルマというのは「事」です。貯蓄可能で、貯蓄量によって死後に影響する「事」。これを理解するのにもかなりの時間がかかったし、これがある程度正しい解釈なのかもハッキリしないのだけど、ぼくはそう解釈しました。
いいカルマと悪いカルマというのは人によって違うらしいけど、人によって違うのに「それはよくないカルマだよ」と言ってくるときがあって、なんで人によって違うのにそんな事言うの?といったらだいたいインド人はみんなカルマの良し悪しの認識は同じらしい。ちょっとよくわからん。まぁ日本人相手に話してるからいろいろ簡単にしてくれているのかも。
いっぱい話したけど書ききれないよ。
結局2日ほどタカシと行動を共にしたのだけど、最後の方に数度
「おれはドルをセーブするのが好きなんだよ〜」
と言ってきて、暗にというかだんだんとドルでチップをくれと言うようになってきた。
「日本人にお金をせびると、日本人はそれを良くないカルマだと思うからよくないよ。」
「お金を上げて人を助けること、それはいいカルマだよ神様も言ってるよ。」
「でもおれはお前の信じている神を信じていないしおれは良くないカルマだと思うんだよ。」
となって、なんだかんだでお茶を濁しつつ最後別れ際に
「じゃあ…ドル頂戴」
と当たり前の用に言ってきたのが割かしがっかりだった。もともと彼にいくらかのチップを渡すつもりではあったのだけどこうおれとしては求められるものではなくて、快くあげたいもの。いくらか気分が害されてしまって最初5ドルぐらい上げちゃってもいいやという気持ちだったんだけど、2ドル上げることにした。財布から2ドルを取り出すとタカシはガッカリした表情で
「え…?10ドルちょいだいよ。」
「いや、これはおれの金だしお前の仕事じゃないんだから、おれはおれが決めたお金をあげたいんだ。」
「…5ドル」
「おれが稼ぐお金とお前の稼ぐお金は違うけどどっちも自分で働いて手にいれた金には違いがないんだ。」
「…じゃあもう1ドル、3ドル頂戴」
「タカシ、金をせびるのは良くないカルマだと言ったはずだ。」
そう言うとタカシはうつむいて分かった。と言った。
側でそのやり取りを見ていた身なりのいい青年に訝しげな表情で
「彼にはお金がないんだぞ、どうして助けてやらないんだ。」
「おれは日本人で、これはインドの問題だ、じゃあどうしてお前こそお金をあげないんだ。」
そう言って宿に戻った。別れ際に次はいつ会えるのかとタカシに聞かれ、タカシと会いたいわけではなかったのだけど、おれは自分のこの無責任な一人旅において他人と約束を作るのはよくないカルマの用に感じ、分からないとだけ答えた。おれこの辺で待ってるからという彼の声を背中で受けつつ宿に戻りもう二度と会いそうにない予感を感じながら眠りについたのでした。